また私は、土偶が吊り下げられたであろう柱木からトーテム・ポールを想起したが、この点に関しても、すでに研究が行なわれていることを知ってうれしかった。それは谷川磐雄「石器時代宗教思想の一端」(1)(2)(『考古学雑誌』13-4・5 1922・1923)で、わが国原始社会における動物信仰を通して、その基層に醸成されたトーテミズムの痕跡を摘出した論文であるという。
このほか、「甦りの世界観」や「土偶がない縄文世界」などの疑問、弥生時代に入って土偶が消滅した理由など、じつに興味深い問題がたくさん残されていることを原田氏から学んだ。土偶は奥が深いのだ。
そもそも拙論には、縄文草創期から晩期に至るクロノロジカル的視点がまったく欠落していた。原始美術を専門としない私には、如何せん手に余るが、不可避の問題であることはよく理解できた。しかしすべては、今後の考察に委ねることにしよう。
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