かくいう僕も、これはいいなぁ!!と心から思ったのは、20年ほど前、鹿島美術財団の助成を受けて、ボストン美術館日本美術悉皆調査を行なったときでした。江戸狩野を担当することになった僕は、これを専門とする河合正朝さんや榊原悟さん、安村敏信さんたちと、キューレーターのアン・モースさんがお蔵から出してくる江戸狩野作品の調査を始めました。
フェノロサやビゲローが蒐集した江戸狩野の作品数はハンパじゃありません。僕たちは最低1日45点と決めて、取りかかったのです。
それはおおむね探幽三兄弟から始まり、徐々に時代をおりてきましたが、幕末狩野派、とくに木挽町狩野派では、魅入られる作品が少なくなかったのです。